子どもの頃の傷を未だ背負っているみんな〜〜

幸せは掴める〜〜〜!!読書体験記とか、日記のようななにか

フランツ・カフカの『城』を読んだ人〜〜〜読んでなくてもいいよ〜〜〜

昔、フランツ・カフカの『城』を読んだ話。


フランツ・カフカといえば、やはり有名なのは『変身』であろう。グレゴール・ザムザという気の毒な男が毒虫に変身してしまう話である。

『変身』がなぜ代表作として知られているのかは寡聞にして存じ上げないけれど、カフカの他の作品を読んで、他の作品に比べて『変身』がいかに読みやすいかということに気がついた。


『城』は、Kという男が測量技師として城に呼ばれる所から始まる。だが、Kは一向に城に辿り着けないし、不思議なことばかり起きる。

おそらく全体が何かの比喩になっているのだろうが、(例えば、なにかを達成できない自分、自分の仕事に無理解な周囲、理不尽な現状など)とにかく一度読んだだけでは状況が把握しづらい。ので、何度もページを戻って読み返すことになる。

その世界では妙な理屈がまかり通っていて、全ての登場人物がそれで当然という顔をしている。かつ、話し方が抽象的で、極めて回りくどい。世界観に入り込むのに非常に時間を要するのだ。

ただでさえ分かりにくい世界観であるのに、時代背景の違いもまた、われわれ読者を悩ませる。それがその時代にまかり通っていた理不尽なのか、『城』独自のルールなのか、判別が難しいという点でだ。


決して単刀直入に物を言わず、事を運ばない。ドーナツの穴のように、真実の輪郭をなぞって、真実以外なら全ての事柄を教えてやろうという物言いに、いらいらさせられながらページを繰る。

もしかすると、何かそういう類の理不尽なことがあって、その気持ちをカフカは書いているのかもしれない。


とにかく長いページ数があるので、読んでいく内これはそういうものなのだと順応していくことはできる。遠回しな物言いも、そういうものだと思えればなかなか面白く感じてくる。その読者の心情は、だんだんとその村の価値観に順応していくKのものと重なる。


ところで、自分も抽象的なことしか言えないのは、自分が何を読んだのか説明できないからだ。おおよそ2000ページほどかけて、何が行われ何が起こったのか、これっぽっちも説明できないのだ。

もしもKが、城にたどり着いてくれたら、これはKという男が城にたどり着くまでの苦難だ、とでも言えるだろうに。

どこにも辿り着けないという点では、この作品はたしかに人生に似ているかもしれない。


自分は、中学生の頃と高校生の頃の二回、この作品を読んだ。一度読んだ本のあらすじは絶対に忘れないのだが、この作品だけはどうしても主題が、伝えたいことが、分からない。よって、あらすじを説明できないのだ。『流刑地にて』なども読んだが、とにかくあらすじが説明できない。何が起こったかと問われれば、何も起こらなかったとすら言える。


そして、ここからが、自分の『城』の読書体験における最も重要な部分なのだが、この『城』という作品は、未完なのだ。


自分は、これを読み終えるまで、その事実を知らなかった。

およそ2000ページもの分量、不可解な世界設定、今まで見たことのない種類のお話。一体どう風呂敷を畳むのかと期待が大いに高まっていた自分は、最後のおかみのぶつ切りの台詞を見た瞬間、がつんと金槌で頭を殴られたような衝撃を受けた。


これで終わるというのは、どういう意味が込められているのだろうと、必死に頭を巡らせた。誤植かとも思った。そして、調べてみると、なんと『城』は未完の作品だったのだ。


自分が『フランツ・カフカ全集』で『城』を読んでいたが故に起きた悲劇であるとも言える。

全集だと、残りページも分からないので、より終わりが突然に感じる。

サビのない歌を聴いた時のような読後感だった。

この歌のサビここかな?あ、いや、こっちか?え、歌終わった!全部がサビだったのかあ……。


(サビ)

残念ながら読書が趣味の友達が居ないので、この趣味について語り合うことはできないのだが、もしこの本を読んだという方がいらしたら、ぜひ感想を伺いたい。

高校生の頃、感想をググったのだが、『いきなり終わってびっくりした!』という感想は残念ながら見つからなかった。

また、『意味わかんなかった!』とか、『人生を感じた!』など、各々が純粋に思ったところを聞いてみたい。そのためにこの記事を書いた。


ここからは余談になるが、自分の特に好きな、『銀河鉄道の夜』も未完の作品である。『銀河鉄道の夜』は宮沢賢治の死後発見された作品で、未完成だったその原稿を継ぎ接ぎして世に出したそうだ。

継ぎ接ぎの仕方に何種類かパターンがあって、全集の中に『銀河鉄道の夜』がいくつか入っていたので、比べてみることができた。(はじめはいくつも載っているのは誤植かと思っていた。)

削られて簡潔になっていたり、繋ぎ方や順番が前後してはいたが、ほとんど同じような話にはなっていたと記憶している。おそらく博士が出てこないパターンが、いちばんポピュラーな終わり方だろう。


未完の大作とは、未完だからこそ大作になるのだろうか。とよく分からない事を考えた。ここ書き足したい、みたいなのが永遠にできるから。


『城』や、『銀河鉄道の夜』、『フランツ・カフカ全集』、『宮沢賢治全集』は、電子書籍などでも無料で読めるので、時間がおありでしたらどうぞ。

著作権法が改正されるらしいけど、どうなるんだろう。

自分の読書歴は、地元の図書館によって培われているのだが、著作権法が改正になっても図書館がしっかりと機能していればお金のない子どもの読書する機会は失われないとは思う。

図書館には流行りの新作から、不朽の名作、専門分野の関連書籍などがあり、広く知識を得るには良い場所だと思う。図書館でジャケ選びやタイトル選びなどして、思わぬ名作を発見した時なんか、得難い喜びがあると思う。

そうして出会った本はたくさんあるが、『だれが君をころしたのか』が特に心に残っている。

今では地元を離れたので、今度読むとすれば電子書籍で買うか、通販で買うか、悩みどころだが、ぜひもう一度読みたい本だと言える。

もう一度読みたい本というのは、この場合、『読んだ時々によってまるっきり違う考え方のできる本』という意味だ。

現在の自分がどのような感想を抱くか、純粋に興味がある。また、読む人の境遇によっても印象が変わる本だと思うので、なるたけ多くの感想を聞いてみたい。