ハッピーシュガーライフは犯罪心理や人間心理の描写がよい〜〜(ネタバレなし)
ハッピーシュガーライフはアニメ化前から、ずっと単行本を買って応援していました(古参面)
●ハッピーシュガーライフの魅力をネタバレなしで紹介
全人類がハッピーシュガーライフを読むべき理由とは…
ハッピーシュガーライフについては、もしかすると、絵柄や一話の導入などで、『これはサイコパス(笑)の女の子を描いた内容ペラペラ漫画では?』と訝しんだ方もいるかもしれません。自分がそうでした。
しかし、その魅力は読み進めるごとに分かってきます。
○まず、キャラの心理描写がよい。
ということです。
それは、どうしてこんな人間になったか、という『登場人物の過去』がしっかりしているからだと思います。これは犯罪心理学でも重要になる部分です。
キャラクターの過去が明かされ、もう一度一話から読み直した時に、『たしかに、こういう過去を持っている人間には、こういう問題行動が見られる。』という心理学的な裏付けがしっかりとあることに気付きます。
これがキャラクターの行動理念に矛盾をなくし、生きた人間としてそれぞれの意思で動いているように感じさせ、巻き起こるサスペンスに説得力を持たせます。
群像劇としても、構成力が高く、質のいい作品だと思います。
○伏線回収をちゃんとする。
自分は、はじめの頃、これは謎(笑)をばら撒いて、真相は特に考えていないやつでは?と思っていました。
ところが、6巻からの怒涛の伏線回収がすごい。4巻から、まさかこれを回収するとは、と驚いていたのですが、どんどん話が動く。
正直、4巻で回収した『あの謎』で、10巻は引っ張ると思っていました。
また、伏線は綺麗に回収し、尚、2人の行く末を見たいと思う。これは純粋に、登場人物のキャラクター性に惹きつけられているからでしょう。
○考察勢も楽しい。
伏線回収をきちんと行うという信頼があれば、考察も捗ります。
本編は解くべき謎だらけです。先の項で述べたように、何度も読み返して楽しむことができます。
また、キャラクターの名前にも考察要素があります。さとうちゃん、しおちゃん、しょーこちゃん、すーちゃんあたりはすぐに見当がつくのですが、だとすれば他の登場人物の名前にも意味があるのでは??と、考察勢が勝手に穴を掘って深読みすることが出来ます。
○絵が可愛い。
表紙を見てわかるように、キャラクターデザインがよい。
目新しいコマの使い方も、絵本のようで世界観にマッチしています。
見ての通りの可愛らしい絵柄ですが、先述したように、キャラクターはリアルの人間の犯罪心理に基づきサスペンスを繰り広げます。そのギャップもこの作品の見どころです。
○徹底したリアルな展開 (ここサビ!)
世の中には、同じ誘拐がテーマのものでも、それを社会悪として扱っていない作品が、数多く存在します。
しかし、このハッピーシュガーライフという作品は、この誘拐劇は、どこまでも悲劇へと転落していきます。
境遇の違う友人同士は決して分かり合えないし、虐待を受けて育った子どもは友人や恋人に過剰に愛情を示すし、被虐待児は必要以上にいい子になろうとしたり、精神年齢が止まったりする。そして、誘拐犯の思い描いた甘い生活は、いつか必ず壊されるのです。
〜〜ここサビ!!!〜〜
そう、『誘拐犯の抱いた幻想は、被害者の否定によって、「意志」によって、ぶち壊される』のです。
(ここがこの作品の最高ポイント)
それらは、ご都合主義の力によって、ある日突然全部がよくなる、なんてことは決してありません。
この作品では、ただ残酷に、リアルに、約束された悲劇を描きます。
○個人的なエモいポイント(←※ネタバレになるので、6巻まで既読の方のみ)
絵が可愛かったり、続きが気になったり、人によって読む理由は様々だと思います。
自分にとってのえもえもポイントは、『似た境遇の者同士の小さな共感』です。
奇跡的に、似通っためずらしい境遇、年代、性別の、誰にも理解されなかった2人が出会い、過ごし、小さな、2人にとってはとても大きな共感を得る。その瞬間が最高潮にエモいです。そして、2人がようやく、人生ではじめて得た、眩しいばかりの幸せには、崩壊の兆しが暗く影を落としている。
その瞬間。いずれ全部だめになる2人が、人生で一番幸せに輝いている、足元には崩れそうな不安がある、その一瞬がエモい。
少女革命ウテナの最後みたいな。
読者は、いずれ必ず訪れる悲劇を知っています。なぜなら、これまでの巻で、幾度となくさとうちゃんがもたらしてきた『悲劇』を見てきたからです。ここもエモいポイント。
○今後の展開について
実はこの記事の筆者は、まだ8巻を読めていません。くそ読者です。電子書籍で買えばすぐ読めるんですけど、前の巻を紙で集めているので、形式を揃えたくて……。
筆者は、3巻まで出ていた頃は、絵が可愛いけど話はよくあるやつだと思っていました。ところが、4巻で『あれ?』と。そして、5巻で、『あっあっあー!まだ5巻なのに』と、先の読めない展開にすっかり夢中になり、(原作組のみんなは分かる)そして6巻で、めちゃくちゃ感動していました。
たった6巻。
これだけの巻数で、ここまで魅せるかと思いました。
3巻まででキャラ描写をしっかりとして、丁寧に積み上げてきた悲劇へのドミノを一気に崩したような、、、
もう買って、実際に読んでみてほしいです。
そして7巻。
6巻から、これからどうするのかと先が気になっているみんなに、まさかの事実です。7巻を読んだ後は、ますます2人の今後に関心が高まります。
2人の過去を知り、なんとか幸せになってほしいという読者の気持ちと、約束された悲劇。
誰が幸せになっても誰かが不幸になる相関図の構成力は、群像劇として、サスペンスとして、素晴らしい出来だと思っています。
筆者は昔から、刑事ドラマや犯罪ドラマ、ミステリ小説が大好きで、そんなみんなにこそ見てほしい作品です。
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